【焼き芋を科学する】科学的視点で調理スキルアップへ

【焼き芋を科学する】科学的視点で調理スキルアップへ

気温も下がってきて、焼き芋が美味しい時期になりました。最近は空前の焼き芋ブームが来ていますね。安納芋がきっかけとなって、甘みの強いねっとり系の焼き芋がスイーツ感覚で選ばれているようです。そんな焼き芋を自宅でどうやったら作れるのかを考察していきたいと思います。

なぜ焼き芋は甘くなるのか

石焼き芋と蒸した芋では甘みがかなり変わってきますよね。焼き芋の甘みはショ糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖ですが、ポイントは麦芽糖。生芋の状態では麦芽糖は含まれていませんが、加熱することによって酵素が働き、甘みが増していくんですね。この酵素をつかってどれだけ甘みを増やせるかが焼き芋の際のポイントになります。もっともデンプンが糖に分解されるのは水分の多い品種で、例えば安納芋などは最高でデンプンの75%が糖に分解されます。

この酵素の正体はデンプンを糖に変えるアミラーゼ系の酵素であるβ-アミラーゼ。根菜を加熱すると甘くなるのはほぼこれの働きによります。57度前後から働き始め、もっとも働く温度は70度前後なので、この温度帯を長時間かけて加熱していくことが重要になります。しかしここで問題なのは60度~70度はペクチンエステラーゼという酵素が働き、さつまいもが硬化してしまうのです。つまりペクチンエステラーゼが働かず、β-アミラーゼが働く温度帯をどれだけ維持して加熱できるかが甘く出来るかどうかの分かれ道。ただしこの酵素は75℃以上では失活してしまうため、ギリギリのラインを攻めなければなりません。

もう1つ、甘くするポイントは水分を飛ばすということです。生芋から焼き芋にする課程で水分が15%~30%減少するため、その分甘みが強く感じられるようになります。水分を飛ばせば飛ばすほど甘みが強くなるので、時間をかけてゆっくり焼き上げていきます。

最後に、保存された芋である、ということが重要になります。というのも、さつまいもは貯蓄する段階でもデンプンが糖に分解されるからです。スーパーで売られているさつまいもは貯蔵後に販売されているのであまり気にする必要はありません。自分で育てたり、おすそ分けで貰ったときなどは、土がついたまま新聞紙にくるんで風通しの良い場所に2週間ほど保存してから食べましょう。

焼き芋レシピ

上記のポイントをまとめます。

・ペクチンエステラーゼが働かず、β-アミラーゼが働き、β-アミラーゼが失活しない温度で加熱する。

・長時間の加熱で水分を飛ばす。

・貯蔵した芋を使う。

最後のポイントはスーパーのものを買うことでクリアできますね。

上2つのポイントを踏まえて考えていきます。

まず加熱は二度に分けるのがベター。β-アミラーゼを働かせる温度での加熱と、水分を飛ばして糖をカラメル化する加熱です。

まず一度目の加熱。安易に80度位で加熱するのは危険。なぜなら気化熱を考慮する必要があります。そして気化熱を極力排除するために、アルミホイルで包みましょう。煮物で言う蓋の役割をさせます。

さて、ベストは何度か、ということですが、80度~100度で90分をとりあえずのベストとします。

温度にばらつきあるし、とりあえずって何だよ!と思う人もいると思いますが、品種や大きさによって変わるから間違いない正解はないのです。自分で調べるしかないです。ちなみに90分以上やるとどんどんねっとり感が増し、ホクホク感が失われています。バランスをとるとこの温度が一番だと思います。あとは好みで前後します。

最後に、火を通して水分を飛ばし、糖をカラメル化させるための加熱を行います。カラメル化は180℃以上で起こるので、200℃30分くらいで一気に加熱してしまいましょう。

食べるときは冷める前に食べ切るようにしましょう。加熱したデンプンは一度冷めると分子構造が変わって食味が落ちてしまうのです。デンプンの老化と呼ばれる減少です。

まとめ

簡単にですが焼き芋について解説しました。家庭で焼く芋よりも石焼き芋のほうが甘い理由はわかりましたか?家庭でも理論がわかれば甘い焼き芋が作れます。

ただし、機種によってばらつきがあるので安定した仕上がりはやはり難しいですね。